- げす
- I
げす(助動)〔「ございます」の転か〕動詞の連用形+「て」, 形容詞連用形, 指定の助動詞「で」などに付く。
「ある」の意で用いられる。 「てげす」の形では助動詞「た」に, 「でげす」の形では助動詞「です」の意に相当する。 げえす。 げんす。 「空蝉の殻風呂敷に成つてで〈げす〉から/滑稽本・七偏人」「もし旦那, …うるさう〈げす〉ね/人情本・春色江戸紫」
〔近世末期から明治初期にかけて, 江戸および東京で, 主として芸人・職人などの間で用いられた〕IIげす【下種・下衆・下司】(1)品性が下劣なこと。 また, そのような人やさま。「~な考え」
(2)身分の低い者。 素性のいやしい者。 下賤な者。⇔ 上種「~下郎」「女も男もいと~にはあらざりけれど/大和 148」(3)召し使い。「食(メシ)たかせける女のむめといふ~なり/浮世草子・五人女 4」
(4)(「下司」と書く)「げし(下司)」に同じ。~と鷹(タカ)とに餌(エ)を飼(カ)え鷹に食物を与えて手なずけるように, 卑しい者を使うには金品を与えるのがよい。~の後知恵(アトヂエ)愚かな者は事に臨んでは何の知恵もでないで, 過ぎたあとでようやく名案が浮かぶ。 下種の後(アト)思案。 下種の知恵は後から。~の一寸のろまの三寸戸障子を閉じるにも下種は一寸ばかり残し, のろまは三寸ばかり残す。 ともに何事にも注意の足りないこと。~の勘繰(カング)り品性の卑しい者はひがみっぽくて, 物事を悪く考えがちである。 また, その邪推。~の逆恨(サカウラ)み下種は好意で忠告してくれた人にも感謝しようとはしないで, かえって恨む。~の猿知恵(サルヂエ)下賤の者はいくら考えても, 浅はかな知恵しかでない。~の知恵(チエ)は後(アト)から「下種の後知恵」に同じ。~は槌(ツチ)で使え下種には道理を説いてもわからないから, 叩いたりして使うのがよい。~も三食(サンジキ)上臈(ジヨウロウ)も三食事柄によっては上下貴賤(キセン)の区別のないこと。IIIげす【解す】※一※ (動サ五[四])〔サ変動詞「解(ゲ)す」の四段化〕理解する。 納得する。 悟る。「それは~・しかねる」「そのやうに事を~・さねえぢやあ, 唐人とはなしをするやうだ/滑稽本・浮世床(初)」
→ げせる→ げせない※二※ (動サ変)(1)理解する。 納得する。 悟る。「媼が詞の顛末を~・すること能はざりき/即興詩人(鴎外)」
(2)結び目などをといてばらばらにする。 ときほぐして, 効力などをとり除く。「足に刀山(トウセン)踏む時は剣樹(ケンジユ)共に~・すとかや/謡曲・歌占」
(3)責任・束縛などからとき放す。 また, 解任する。「勅勘を蒙り神職を~・せられて/太平記 15」
(4)解状(ゲジヨウ)を上級の役所に差し出す。 上申する。「注給はらんと欲するのみ。 謹て~・す/貴嶺問答」
Japanese explanatory dictionaries. 2013.